人を捕らえる覚悟

家で出る餃子が変わり種のものばかり

エビ入ってたり根菜入ってたり

野菜はいいんだけど私はエビがそこまで好きじゃないから、この餃子はいつまで食卓に並ぶんだろうな〜と思っていた

 

それがここ半年くらい

そしてつい最近、周りから怒涛の"普通の餃子"攻撃を受けた

 

櫻井翔のCM

最近覗いてるジャンルの二次創作漫画

トドメに友人から来るLINEの餃子スタンプ

 

どうして世の中にはこんなに餃子が溢れているのに私は普通の焼き餃子にありつけないのか

 

冷凍食品のサイト見ながら泣いた

 

餃子食べたすぎて泣く日が来るなんて思わなかった

 

だから今日のランチは絶対に餃子を食らおうと思って家から出た

けど私の通う大学の学食には餃子定食みたいな気の利いたメニューが無かった

 

私は気が狂いそうになりながらやるべき事だけ済ませて下界に降りるべくバスに乗った

 

下界に降りて電車に乗った

頭の中は9割餃子

 

検討をつけてあった餃子の店のある駅で降りて猛スピードで歩いた

競歩の選手かと勘違いするくらい頑張った

 

けど  その駅はあまり治安がよろしくなくて

「おねーさん美容エステどっすか!?」

「おねーさん脱毛したくない!?」

みたいな胡散臭いキャッチの兄ちゃんがいっぱいいる

 

で、今日も相違なく兄ちゃん達がいた

その中の1人

髪の毛は三浦翔平なのに服が歌広場淳みたいな兄ちゃんと目が合ってしまって

ヤバい、と思った瞬間に背後に立たれた

 

これはもうカバディだな、と思った

 

私はキャッチに捕まったらカバディで勝敗を決めようと思っていた

けどその時の私の頭の中は9割餃子

9割の餃子にカバディは掻き消され

残ったのは餃子と私の仲を邪魔する間男への怒り

 

「お姉さん今脱毛するとクーポンが…」

 

背後から話しかけてくる男に、首をぐりっと捻って顔を向けた

多分般若みたいな顔していたと思う

 

「すいません 今あたしお腹空いてるんで いいですか?」

 

死ぬほどドスの効いた声でお腹が空いている事を兄ちゃんに伝えた

 

兄ちゃんは

「アッハイ…ヘヘ…スンマセン…」

と言い、スススと後ろに下がって退散した

 

結構呆気なく退散して呆れてちょっと笑ってしまった

 

 

餃子の店に着いて注文も済ませて少しした時

心の余裕が出来たのかキャッチの兄ちゃんの事を思い出した

こんな二十歳そこらの小娘に凄まれて退散するくらいならキャッチなんてしなきゃいいのに

と思った

人の時間を奪う覚悟が無いんだなーと思った

 

そんな事考えたけど餃子が自分の元に来てからはすっかり忘れ去った

頭の中が10割餃子になった

 

私の時間を奪うキャッチより安くて美味しくて血肉になる餃子の方がえらいな、と思った